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内分泌・甲状腺疾患

甲状腺とは

  甲状腺

 

甲状腺は首の前部、のどぼとけの下にあり、正面から見ると蝶の形に似た臓器です。甲状腺ホルモンという体に必要不可欠なホルモンをつくっています。

甲状腺の病気

甲状腺の病気には大きく分けて2つあります。

  • 甲状腺ホルモンの異常によるもの(甲状腺ホルモンが過剰になったり不足したりする)
  • 甲状腺に腫瘍ができるもの(腫瘍には良性と悪性のものがあります)

甲状腺ホルモンの異常によるもの

甲状腺ホルモンが過剰になる病気

甲状腺でのホルモン合成が活発になり、甲状腺ホルモンが過剰になる病気
バセドウ病、機能性結節、妊娠一過性甲状腺中毒症など

甲状腺が炎症などで破壊され、甲状腺内に蓄えられていた甲状腺ホルモンが血液中にもれ出てホルモンが過剰になる病気
亜急性甲状腺炎、無痛性甲状腺炎など

症状


甲状腺ホルモンの過剰により、動悸、息切れ、汗の増加、体重減少、手の震え、全身の倦怠感、暑さに耐えられない、といった症状が出ます。亜急性甲状腺炎では、痛みを伴う硬い甲状腺の腫大、発熱を認めます。

診断


血液検査、エコー検査などを行い、診断します。

血液検査

  • 甲状腺ホルモン
  • TSH
  • 抗TSH受容体抗体(TRAb、TSAb)→ほとんどのバセドウ病患者さんで陽性になります。
  • 抗TPO抗体、抗Tg抗体→ほとんどの橋本病患者さんで陽性になります。無痛性甲状腺炎の診断に重要です。

その他にサイログロブリン、CRPなどの検査をして診断を行います。

エコー検査
甲状腺の腫大、腫瘍、血流の増加、痛みを伴う低エコー域などの所見から診断します。

参考画像
エコー検査

治療


バセドウ病では抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール)などの内服治療を行います。甲状腺ホルモンの産生を抑える抗甲状腺薬の内服で、徐々に甲状腺ホルモンが低下します。症状は内服直後に良くなる事はありませんが、2週間後位から少しずつ良くなりはじめ、通常は1〜2か月もすればかなり良くなります。ただ、抗甲状腺薬の副作用は、薬を飲み始めて3か月以内に起こる事が多く、この間は副作用に注意することも重要です。
副作用として、無顆粒球症、蕁麻疹などの薬疹、肝障害などがありますが、早期に適切な処置をすれば改善します。そのため、定期的な副作用チェックが必要です。
特に無顆粒球症は白血球(好中球)が突然減って体の抵抗力が弱り、高熱や喉の痛みが出ることがあります。放置していれば白血球は下がったままで大変危険な状態になります。38度以上の高熱やのどの痛みが見られた時には必ず病院を受診してください。
甲状腺機能が安定すれば薬の量も徐々に減りますが、抗甲状腺薬による治療は2年位かかります。特に抗甲状腺薬を中止する時期は難しいですので、良く相談しながら中止時期を決定することが大事です。
甲状腺が破壊され、甲状腺内に蓄えられていた甲状腺ホルモンが血液中にもれ出て、ホルモンが過剰になる病気では、自然経過で改善していきます。

甲状腺ホルモンが不足する病気

慢性甲状腺炎(橋本病)の一部、甲状腺の手術・放射線治療後、ヨウ素過剰など

症状


甲状腺機能が低下してくると全身の代謝が低下し、体のさまざまな機能が低下します。精神機能が低下することによって無気力、抑うつ、動作の緩慢、記憶力低下などを生じます。寒がり、疲労感、体重増加、便秘、浮腫、皮膚の乾燥、脱毛、徐脈もみられます。

診断

血液検査

  • 甲状腺ホルモン
  • TSH
  • 抗TPO抗体、抗Tg抗体→→ほとんどの橋本病患者さんで陽性になります。

などの検査をして診断を行います。

エコー検査
甲状腺の腫大・萎縮、内部エコーの低下・不均一などの所見から診断します。

治療

甲状腺ホルモンの補充を行います。
また、ヨウ素は甲状腺ホルモンの原料なので、たくさん摂るとホルモンが増加するように思われるかもしれませんが、実際には過剰なヨウ素は甲状腺の働きを弱めてしまいます。ヨウ素を適切に制限するだけで、ホルモンが改善する場合もあります。

院長からの一言

過剰なヨウ素(ヨード)を摂取すると甲状腺ホルモンの合成は低下します。
通常は一過性かつ軽度のホルモン濃度の低下のみで2〜3週間で正常化します。
ただ、橋本病があったりバセドウ病寛解中の患者さんなどでは甲状腺機能低下症に陥ることがあります。この様な場合は、ヨウ素の過剰摂取を止めることで甲状腺機能は改善します。


さらに詳しく

パセドウ病と慢性甲状腺炎(橋本病)

  • バセドウ病
    自己抗体(TRAb、TSAb)が甲状腺を刺激することにより甲状腺ホルモンが過剰に作られる病気です。男女比では女性に多く、20~50歳代の方に多く発症します。
  • 慢性甲状腺炎(橋本病)
    甲状腺に慢性の炎症が起こる病気です。男女比ではやはり女性に多く、30~50歳代の方に多く発症します。炎症の程度が軽度であれば甲状腺機能は正常ですが、炎症が進行して甲状腺の働きが悪くなると、甲状腺機能低下症に至ります。
    甲状腺機能が正常で治療の必要がない患者さんも多くいますが、甲状腺機能が低下した場合は甲状腺ホルモンの補充が必要になります。機能が正常な患者さんでも徐々に甲状腺機能が低下し、機能低下症に移行する場合があるため、定期的な検査が必要です。
    また、炎症が一時的に増悪し、無痛性甲状腺炎を起こす事があります。痛みはありませんが、内部に蓄えられていた甲状腺ホルモンが血液中にもれ出てくるために、一時的に甲状腺ホルモンが過剰になり、ホルモンが高いときはバセドウ病と紛らわしい症状が出ることがあります。通常は数か月以内には自然に治ります。

院長からの一言

甲状腺機能低下症では、徐々に症状がでてくるため、甲状腺の病気だと分かりにくいことがあります。ご高齢の方では認知症のような症状と間違われたりすることがあります。
また、バセドウ病や橋本病(慢性甲状腺炎)などの甲状腺疾患は妊娠可能年齢の女性に多くみられ、不妊や流早産などの妊娠合併症との関連が報告されています。

甲状腺に腫瘍ができるもの

甲状腺の腫瘍には良性のものと悪性のものがありますが、多くは良性の腫瘍です。触診、腫瘍のサイズ、エコー所見などから、必要に応じて穿刺吸引細胞診を行い、病理検査を行います。

甲状腺の良性腫瘍
◾腺腫様甲状腺腫
◾プランマー病
◾甲状腺嚢胞
◾濾胞腺腫
甲状腺の悪性腫瘍
◾甲状腺乳頭癌◾甲状腺濾胞癌◾甲状腺髄様癌◾甲状腺未分化癌◾甲状腺悪性リンパ腫


甲状腺結節のエコー所見

甲状腺結節

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